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まさかJR三宮駅から各停で京都まで行くとは思ってなかった。
加古川のあたりで人身事故があり新快速が不通になってしまい、各駅停車でしか京都へ行けなくなってしまった。
午前11時に京都の『地下鉄丸太町上がったところのカメラ屋の前』での待ち合わせは自宅を早く出たにもかかわらずギリギリの時間になってしまった。
「もう来ている」
と木陰から時間ぎりぎりに姿を現す「ゴルゴ13」のような余裕は、無い。

このところ遠方に出ることが重なり、今日は京都、来週は沖縄に東京とハードな旅を強いられることになっている。

中京区にある印刷工場の耐震改修方法について現場で打合せを行い、また神戸に戻る。
帰りは新快速は動いていた。

「耐震偽装事件」がきっかけで、昭和56年以前の建物が現行耐震設計に基づいていないので地震が来れば危ないんじゃないの?ということがやっと陽の目を浴びることとなった。
ただ現状としてはどうしようもないというのが事実だ。
どうしようもないというのは、地震が来たら倒れるかもしれないという建物は多い。
そのためには国あるいは各自治体が援助を施すということが当然必要となってくる。
で、現実はどうかといえばほとんど出ない。
例えば公共の建築物については、「耐震診断」してくださいね。時間かけてしっかりやってくださいよ。お金?もうこういうのは慈善事業みたいなものでしょ。でも仕事だしね、少しくらいは出しますから、ってぇのが現実で、提示金額見たらやる気なくなっちまいますね。
耐震診断判定委員会で難しい質問の嵐を受け、何度かのやり取りでやっと「判定診断書」という紙切れをもらう。この作業に対する報酬は「雀の涙」以下だ。
建前として、耐震改修やりましょう、いつ災害が来るかわかりませんからね。本音として、でも金出ないからね、であればそんな仕事やる人は当然いなくなってしまう。
だから、帰りの電車の中でどうすればそんな面倒な手続きを踏まないで改修が出来るかを考えていた。
答え?もちろん出しましたよ。そんな面倒な手続きを経なくとも簡単に改修できる方法を,ね。
どうするんだって?もちろん企業秘密ですよ、アナタ。
こういうこと書いてると役所から睨まれちゃうかな?
読んでるような役人がいたらこう言ってやりたい。
こんなブログ読んでないでもう少し実情にあった方策を考えたらどうなんだぃ。
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比較天気天気もよかったので六甲の住宅の現場へ行く。
「あとは外溝(建物の外回り部分)だけですよね。ちょっと見させてもらってもいいですか」
工務店の社長に電話を入れた。
「いいですよ。私は今日行けないんですよ。鍵かかってますけど適当に入ってもらって見ておいてもらえますか?」
車のキーを持ち出かけようとしたところで、
「名刺持っていったほうがいいんじゃないですか?」
I平がそう言った。
「誰かいるわけじゃないから大丈夫だよ。適当に現場見て写真撮ってくるから」

「怪しい人だと思われたらまずいでしょう」

そういえば以前現場に行ったときに、サングラス掛けたまま車から降りた途端に警戒された、ような気配を感じた。
まあどちらかといえば、「建築家」ではなく、「構造家」という風体でもなく、「設計士」のような地味な感じでもなく、
「なんなんだ。ヤバそうなのが来たぞ。黙って知らん振りしてようぜ。こっち来るんじゃないって・・・え?なんか言ってるぜ。今日は仕事にならないんじゃないの?え?なんだって?」

「写真撮らせてもらっていいですか?」

「どうぞどうぞ、写真くらいならいくらでも。命とられるよりかはましだからな」
そういう風に見られているならば、I平の言うように名刺くらいは持って行ってた方がよさそうだ。


oko2

「最近どう、調子は?」
「クスリがないとやっぱりつらいです。」
「いや、実はオレもそうなんだ。切れそうになるととっても不安になるんだよね。」

単に花粉症とストレス性蕁麻疹を持つ男同士の会話なんだけどね。

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夜中にこのブログを見ている人たちのために。
京都の駅近くにある「新福菜館」のラーメンのアップです。
前からこれを撮りたかったのですよ。
ラーメンの上に乗っている赤い薬味は「唐辛子ニンニク」です。
これが入ってないとね。


おなかすいてきちゃったでしょ。


新福菜館

「午後3時に役所に来てくれ」

神戸から車で約2時間30分。和歌山県有田市の某役所へ構造の説明に行く。
「耐震診断の書類も作らないで話が通るんかいな?」
耐震補強をしても無理な建物、つまり人間で言えば元気に見えるが100歳をとうに超えているジイさんの健康診断をして、ま、ビタミン剤とバイアグラ飲ませておけばまだ少しは元気な状態が続くかもしれないでしょう、というような所見を出せ、と言われているようなものだから、
「そいつは無理でしょう」
と言うしかないわけだ。
健康診断書など今更どうしてっていうような状態にもかかわらず、そういう形式を踏まないと話が通らない、ということらしい。
他人事のように書いてはいるが、これでも針のむしろに立たされているわけで、役所の担当者に理解してもらえなければ、隣に座っている先生に罵倒されるだけではすまないような状態になっていた。

「すんなり通ってしもたやないかぁ。ほんまにええんかいな」
結果は順調だった。説明もすべて理解していただいたようだ。
まあ、だめだったらこれ書いてないんだけどね。
で、また2時間30分かけてオフィスに戻る。

リラックスしてから今日は早めに帰ろうと思っていたのだが、デスクにはFAXが山積みされている。
「急ぎですのでよろしく」
という相も変わらない通信欄などは無視して足をデスクに放り出してコーヒーを飲む。
「明日は昼から京都で打ち合わせだからね。ゼネコンが説明聞きたいらしいんだって。」
I平にそう言った。
「なに聞かれるんですかぁ?」
「心配しなくって大丈夫だよ。今は『姉歯事件』でいろいろあるじゃない。構造やってる人間の顔見たいんじゃないの?」
「そうなんですかぁ。」
「そうやって構造設計者の顔を見たいって方がマシだと思うよ。中には構造設計者を現場に出さないってところもあるからね。」
「そうですよねぇ」
「うちの『姉歯』を行かせますって言っておいたからさ」
「やめてくださいよぉ~」
こういうジョークは針のむしろから解放されたものではないと言えない言葉だと思う、でもないか。
昨日、つまり3月24日は3年前に亡くなった「ゴローちゃん」の命日である。
仕事の上でのよきパートナーだった彼の突然の死からもう3年が経ってしまった。
忙しさにかまけてお墓参りはまだ一度もしていない。
今年こそは彼が眠っている場所へ足を運ぼうと考えている。

「寝不足なんやから起こさんといてくれるか」

なんて言われそうな気がする。

今年になってから仕事の上でもいろいろあり、ともすればくじけそうになりそうだったが、これくらいでくじけてると彼に怒鳴られそうだ。
そういえば去年の今頃も精神的に疲れていたような気がする。
ゴローちゃんの家を訪ね、奥さんといろいろ懐かしい話をしているうちに癒され、くじけてる場合じゃあないぜ、と思ったものだ。

毎年この時期はゴローちゃんにケツ蹴っ飛ばされてるんだ、そういえば。
いつになったらゆっくり寝かせてくれるんや。
セブンスターを吸いながら渋い顔をしているゴローちゃんの顔が浮かんできた。
朝一で湾岸線を走って和歌山へ向かう。
ちょっとしたことで話がややこしくなってしまった和歌山の中学校の耐震診断について、その専門家にレクチャーを受けるためだった。
こういうときの湾岸線の朝日はまぶしい。

打ち合わせは順調に進み、ずっとモヤモヤしていた部分が晴れていった。
結果を伝えるため車の中から設計事務所の先生に電話をかけた。
「あのなぁ、いつまでかかっとるんよぉ。もう心配で心配で・・」
温めておいたこちらが悪いのだが、電話の耳元が熱くなってくるほど怒鳴り散らされる。

ふ~、帰って資料を作るか。
また電話が入る。
「杭の位置おかしいじゃあないですかぁ。どないなっとるんですかぁ」
別件でまた電話の耳元が熱くなる。
さてと、帰りにサービスエリアで「かんぼこ」でも食べながら帰るか。
週末の電話はだいたいこんなものだ。

いい電話はそうそう入ってくるものではないが、悪い電話というものは時として重なってしまうもの。
こういうときはまず冷静になることだ。

オフィスに帰って仕事を整理しているといつの間にか6時を回ってしまう。
おっと、今日はシラッキーギター教室だ。
ジャズ理論の基本はまだ理解していない。

「来週までにはしっかり練習しておきますよ。頑張りますので今度はセッションですね、ハハハ・・」

で、その来週になってしまった。
このまま行くとおそらく今日は指が動かないだろうな。

ルート音がCだったらナインスは?
え~~っと・・ギターの陰で指を折って九つ数える・・・レ・・じゃなかった・・Dです、か?
メジャーセブンの音は?
え~~・・・レ、じゃなかった・・D・・おっと、じゃないよな・・セブンスだから・・

こういう時シラッキー先生は僕の方を決して向いてはくれない。

また怒られるんだろうな・・サボっちまうか・・いや、怒られついでだ、行くか!
「金曜はかったるい」という笹沢佐保氏の小説を思い出してしまった。
重い気分が体全体を包み込む、という状態を引きずりながら仕事をしている。
トンネルを抜ける前の状態なのか、トンネルへ入った状態なのかわからないが精神的にはかなりプレッシャーを感じている。
スタッフが帰った深夜のオフィスでいっそうそういう気持ちが高まったとき、
ガサガサッとドアの方でいきなり音がした。
なんだよ、そっち系のお客さんがいたのかと思いつつ一番奥のデスクから立ち上がり扉の方を目指して歩いた。
扉の傍らに・・・・
唯一毎週楽しみにしている「ジョナサン・ケイナー 」の星占いにこういうようなことが書いてあった。

「・・・あなたの側で何かを変えたら、幸運の星はもっと簡単にあなたの人生にアクセスできるかもしれません。思い当たる節があるのでしたら、さっそく実行してみてください。」

漠然と考えても何のことだかわからなかった。

休日の朝、オフィスに出てきて仕事をしていたときのこと。
デスクの周りには書類が山積みされている。
「まあこれだけは整理しておかないと、わかんなくなっちゃうから」
と広いテーブルにどさっと書類を投げ出して必要なものだけを拾っていった。
これも一応まとめてホッチキスでとめておくか、おっと、こんな資料があったんだ・・
で、午前中は結局山のように積まれた資料をコツコツ片付けていく作業に終始した。
今までモヤモヤしていたプレッシャーも、
「悩んでいたのはこれだけだったの?なんだよたいした事じゃないじゃん」
気持ちすっきりで、昼からは効率よく仕事が出来た、ということです。

最小限だけの片づけがいつの間にか全部片付けていた。自分を変えるのは意外と簡単なことだと、そう思いましたね、ハイ。
「Tです。WBCが長引いたので今日は休みます。」
Tからメールが入った。
まあ、日曜だからかまわないんだけど、で、どっちが勝ったんだよ。こっちは見たいの我慢して仕事してるんだからせめて結果くらい連絡しろよ。
「日本が勝ちました。泣けました。」
こっちは仕事で泣いてんだよっ!

家に帰ってからあらためて「報道ステーション」で見た。
泣けるじゃないか、ばかやろ~~
イチローがこんなに素晴らしい選手だとは。今の日本の野球にないものを見た、というのが感想だ。
王監督の器の広さもなかなかのものだ。
監督は長島さんで、チームリーダーがキヨハラとか、ナカムラノリ、などであったならこういう感動するようなシーンが見られたかどうか・・・ま、それはさておき、素敵な映画を見せてもらったような気がする休日だった。
「コンクリート打設したんですけど、どうもしっくりこないんで和歌山の現場から打ち合わせに来ました。」

「「どこがしっくりこないと・・・?」
「あれ?センセ、お昼からどこかへ打ち合わせに行く予定だったんでは?もう2時間以上過ぎてますよぉ」
「え~~、ヤバイ、東京からもお客さん来る予定だったんだよね。携帯にも連絡入ってないから相手も忘れてたとか・・・んなことないよね、はは・・・」

「これから打ち合わせ入れてたんでは?もう出ないと間に合わなくなるんじゃないの?」
T女史は半ば切れている。
何でこんなスケジュール組んだんだよぉぉ・・・

そこで目がさめた。
みのもんたの「朝ズバッ!」が終わりかけている時間だ。
精神的な休養が必要になってきた。
「あぁぁ、どぉのぉペンでもおためしぃくださってけっこうですのでぇ」

びっくりしたぁ・・
三宮のロフトの4階。
知り合いの御子息の入学祝をと思い、万年筆コーナーに来ていたときのことだ。
比較的書きやすいボールペンを、と思ってケースを眺めていた。
クロスはいいんだろうけど、ボディーが細いので書きにくいか・・などと独り言を言っている時に目の前に「オバサン」のような若い男が僕に向かってそう言った。
!!びっくりするじゃねぇかぁ・・・

「こ、このちょっと太目のボールペンを見せてもらえますか」
「おなじせいひんでもぉ・・(ここまで少し甲高い声で)・・びみょうに、かきあじがちがいます(フットボールアワーの向かって左の「いわお」という人と同じような口調でいきなり低い声に下がる)。どうぞおためしをぅぅ」
半開きの目で僕の方を首をかしげながらそう言った。
視線を合わすなって、視線を!

「にいちゃん、『モンブラン』ってどこや!」
携帯で話をしながらこのコーナーにやってきた男が「いわお」に聞いた。
「こちらからぁぁ、このあたりまででございますぅ」
「『モンブラン』て、めっさ高いやんけ。あんた何プレゼントするつもりや?え、なに?ジッポーってか?世話になっとるからしゃあないわなぁ」
相手に品物を贈る場合に、自分で手にしないでブランドだけで金を払ってしまう人もいる、ということを現実に目の当たりにしてしまった。
「これでええかな、これや」
「おまちくださいませぇ・・・ただいま先のお客様のしなをおとりつかっておりますのでぇ・・」
ジーンズを器用にずり下げた格好でシナをつくって再びこちらに小走りでやってきた。
「おまたせぇ、いたしましてぇぇ」
視線を合わすなっていってるだろ、視線を!
シナを作りながら、腰を振りながら楽しそうに僕が選んだボールペンを贈答用に包んでいる。
早くこの場から立ち去りたいんだよ、ワタシ。横目でこっちを見るんじゃあない!視線を合わすなって、ね、お願いだから早く包んでちょうだい・・目を半開きにするなって言ってるだろうが!

「おまたせぇええ・・・いたしました・・こちらにサインを」
視線あわさないでくれぇぇ
締め切りぎりぎりのところで仕事をしているところへ電話が入る。

「阪神大震災の・・・・」
また何かの勧誘もしくは投機、または小豆相場のご案内、程度のことかなと思って受話器を切りそうになった。
「・・ですね、経験をされた構造設計者のインタビューをしてですね・・・」
ん?何の話だ?
よく聞いてみると、ある建築雑誌で企画が行われ、今流行の「建築の構造」についての特集を組んでいるのだが、阪神大震災を経験しているものがメンバーの中にいない。で、神戸で仕事をしているオタクどうでしょうか?という話だった。
建材メーカーからの話で、
「まあ詳しい話は後ほど電話が入ると思いますので、よろしく。」
ふ~む、うちのようなアウトローなオフィスに電話が入るって事は、例の「姉歯事件」で構造やってた連中はみんな商売替えしちゃったてことか、とデスクの上に足を乗せてしばし考えてみる。

「何の話だったの?」
T女史が不安げな顔をしながらデスクにやってきた。
こういう理由で電話が入ったということを伝えると、
「原稿書いたりして時間とられちゃうんじゃないの?」
「そりゃあそうだけどさ、全国区の雑誌だからいいんじゃないの?」

「締め切りが守れればね」
日曜日もオフィスに出て仕事をしていたのだが、夕方になってから今田町の温泉に向かった。ここのところずっと仕事しっぱなしなので、少しでも気分転換をしないと身体がもたない。

遅めの温泉の方が空いていると思っていたのだが、ガキ、が多かった。
岩場を走りながらすぐ近くに飛び込んでくるわ、泳いでいるのはいるわで、
「このガキの親はどこだいっ!」
と怒鳴りつけようかと思ったが、いやいやせっかく温泉に来てるんだからここはちょっと落ち着いて野ざるやイノシシとともに温泉に浸かってるんだと自分に言い聞かせ目を閉じた。
湯の流れる音に集中すればガキの声はきっと聞こえなくなる・・・聞こえなくなった。
溺れちまったかなと目を開けるとそこには背中まで入れ墨だらけの若い男たち7,8人がお湯に浸かっていた。
なんなんだよ、こいつら。
おっかなさそうな野郎どもが並んでいるとさすがにビビる。
一番危なさそうな頭を丸めた男が立ち上がって岩場に腰を下ろした。

「立ちくらみするんだよね」

堅気だと判断した。
ガキを追っ払うにはこういう「ヤクザっぽい堅気」も必要だと思う。

「ジュンアソシエイツというのは構造屋さんですかねぇ。」

「はい、そうですけど、どちらさん?」
「いや、デザインやってるものなんですけどね。構造屋さん探してましてねぇ。で、どんな物件やってますの?」
「いきなりどんなといわれてもね・・・」
「じつはね、例の番組あるでしょ、知ってるはりますやろ、ビフォア・アフターいう番組。もう終わるみたいなんやけど、ああいう「匠」、僕やったらもっとええ提案できると思うんですわ。一応今こういう時期やから構造屋さんにも見といてもらわなあかんかなおもてね。住宅のリフォームやるときに出来たらアドバイス欲しいなおもてね。」
「テレビの番組はあまり興味ないんですよ。それにあれはあれで番組としてで現実的なものではない・・」
「まあ、それはよろしいやん。で、どんなもんやってるか教えてもらえたらな、おもてますねんけど」
「電話でいきなりというのはねぇ。一度来て頂けますか?」
「いや、FAXでええからやった物件送ってもらえまっか?番号はね・・・」
「あの、FAXの番号というよりは普通はオタクの電話番号を先に言うものじゃないんですかね」
「あ~~、そやったな。番号は・・」
「あのねぇ、こういう電話でいきなり『なにやってまんのん』なんていうような電話をかけてくる前に、例えば『一度御伺いしますので』なんていうのが最低のマナーなんじゃないでしょうかねぇ。」
「いや、まあそれはそやけどやな・・・」
「顔も見ないままで一緒に仕事をしようとは思ってませんので」
「一応どのくらいの値段でやってはんのかとかやね、そういうのしっとかんと・・」
「だからそういうのを含めて会って話をする。ビジネスとしては常識でしょ」

「建築業界はそんなもんやあらへん。そんな時間短縮せんと仕事あらへんやろが」

フィクションに近いノンフィクション、まあこれに似たような会話を日常的に繰り返しながら「構造屋」をやっとりまんねん。
いまさらながらというのか、ようやくというのかなんだけど、「Winny」というものについて問題視されてきている。
防衛庁の機密が流失したり、警視庁その他のデータがその「Winny」によって外部に持ち出されちゃった、どうすんだよぉ・・というのが実情だ。
もう、あきれちゃったね、ハイ。
これほどまでに危機管理が日本全体でなされていないということにね。
そしてもうひとつ。
「データを家に持ち帰って仕事してたらを経由してウィルスに感染してデータ持ってかれました、すいません。」
うそですね、っと。
その人たちは仕事をするといいながら「Winny」立ち上げっぱなしで、いろんなものダウンロードしようとしてたと、そうワタシはにらんどりますね。
なぜならば、家に仕事持ち帰ってやるっていうのは切羽詰ってるわけで、そんなときに外部からデーターをダウンロードした途端にパソコンの動きが急激に遅くなるようなものを立ち上げておくわけないでしょ。
つまり、「仕事を家に持ち帰ってする」ではなく「『Winny』でいろんなデータをじゃんじゃん落としたい」というのが本当のところだと思う。
パソコンを端末的に使うならば問題はないんだけど、ネットワークで使うならばウィルスの侵入に対して気を使うのは当たり前で、自分の身は自分で守らなければ誰も助けてはくれないし他人に対しても多大な迷惑をかけてしまうってことを自覚しておかないと使っちゃいけませんぜ。
実はそういうことを僕自身今まで何度も言われてきた。

それにしても、マスコミでその話題を取り上げるとき、どうして例外的に専門家を出さないのだろうか。
まったく知識のない人たちだけがしゃべっているんだけど最後には、
「いやぁ、あたしゃパソコン音痴なんで、ハハハ」
OS自体がウィルスだと唱えている人がいる時代に、「パソコン音痴、なんだけど、こういうのはよくないですねぇ」と他人事のようにしゃべってるようなこの国の危機管理はまだまだ高まらないだろうし、「セキュリティレベルが低」に設定された国に現実的な「ウィルス」というものが侵入してくるのは早いんじゃないかと危機感を持っている人、これも少ないんだろうね、きっと。

※あんた、「Winny」の知識けっこうあるじゃない。ひょっとして使ったことあるんじゃあないの?
「Winny」の存在を知ったのは3年ほど前だし、その危険度を知ったのもその頃だ。
ユーザーとしては良し悪しを慎重に判断してからパソコンにインストールをする、これは当たり前のことだと思う。
1年ほど前にも流出事件は発生しているし、このソフトを作った人も捕まっている。
そういう状況も無視して使い続けたお馬鹿な人たちの上司の人、今更パソコン勉強しようとしてるんじゃないのかしら?
もう遅いっての!

ウィリス

「いや~ひさしぶりぃ!今大変なことになってるじゃないですか。」
「この仕事やってると、ホント肩身狭いですよ。信念をもってやってたのに、信念をもってやってますって言うだけのヤツまで出てきたんですからね。」

オフィスの近くにある「すずめ」という讃岐うどん屋で久しぶりにデザイナーのY氏と出会った。
挨拶代わりにこういう話になるのは慣れっこになってはいるもののやはり心がチクリと痛くなる。
札幌での新たな耐震「偽装事件」に関しては、堂々と言ってのけている割には内容が全然伴っていない確信犯、としか思えないものだった。
現状の耐震設計自体がおかしいとか、信念をもってやっているので間違いがないだとか、しかもどうして「二級建築士」なんだ。
こういうことが通じるならばすべての業界でルールが崩壊してしまうことになるわけでしょ。

例の民主党のつまんないメール騒動も同じレベルだと思うんだけど、もうそろそろ話題が尽きてきている。
重大な問題が起こった場合に一番必要なのは原因は何かということと、どうすれば是正していけるか、ということだと思う。
たしかにその張本人を引っ張りだすってぇことも必要なんだろうけど、今のマスコミはそこだけに焦点を当てすぎて、肝心なところを見過ごしているうちにその事件が風化していく、というパターンになってきていると思う。
大きな問題がどんどん忘れ去られてしまい、そういうことに慣れてきているということに対してもっと危機感を感じるべきなんだと思うんだけどね。
運転士を不合格になった男が1年間電車を運転していてそれが発覚した、なんて事件も今ネットでニュースを見ていると小さく出ていた。

「日本の質が低下している」とはよく聞く言葉ではあるんだけど、これも原因が何で、どうすれば低下するのを防げるか、ということになると誰もこれに触れようとはしない。
「信念」で通すしかないんでしょうかねぇ。

建物1

急にノートパソコンの調子が悪くなった。深夜の1時をとっくに回った頃のことだ。
どのアイコンをダブルクリックしても立ち上がらない。
こういう機械ものとは相性が悪いのは今に始まったことではない。
真夜中にプロッターを操作していたときにいきなり動かなくなったこともしばしばだった。
昼間、人がいるときは「いい顔」をしているくせに、僕と二人っきりになったときはわがままになってしまう。
そういうときに限ってもう仕事は間際になっているときだ。
「なにサボってんだよ!」と思わずプロッターの足を蹴飛ばして自分自身があまりの痛さに動けなくなったこともある。
最近少しばかり画面の輝度が悪くなってきたような気がしてはいたもののさほど気にしていなかった。
少し前の僕ならばマウスを画面に投げつけてそのまま帰っていたかもしれないが、最近は性格が丸くなったのか、
「まあそういわないでさ、今度立ち上げたときはちゃんと動いてね。頼むよ、意地悪しないでさ・・・」
いやなヤツだと内心思ってはいるものの、ここで言うことを聞いてくれないと仕事に差し支えるので、やさしく言いながら立ち上げのボタンをそっと押した。

「なんなんだよぉ、こっちは下手に出てるのにさ。どうして立ち上がらないんだ!」

と思いつつも冷静に深呼吸をする。

「どうしたんですかぁ?」
陰でコツコツ仕事をしていたI平がそう言った。
そっか、まだ仕事してたんだ。
「立ち上がらなくってさ・・やばいんだよね。」
「ちょっとやってみましょう」
で、こういうとき、つまり他の人がいるときはちゃんと動くんだよね。

「何で動くんだよ!」
携帯電話のメールというのは基本的には好きではない。
なんだかチマチマしている気がしてどうしても貧乏くさく見えてしまう・・・おっと、これは個人的な感じ方なので気にしないようにね。
ただ、仕事でメールが入った場合は出来るだけ早く返すことにしている。
携帯のメールで便利なところは、何度も使うワードはすぐにでて来る、ということだ。
例えば、「おはようございます」と打つ場合は「おは」を入力したら選択肢が出て、頻度の高い順から並んでいるので比較的早くメールが打てる。
「至急連絡を」「至急メールで送れ」
などと、比較的督促のメールが多い僕の場合は、
「も」を打つだけで
「申し訳ありません」が出てきて、
「し」で
「至急」となり
「よ」で
「宜しくお願いいたします」
が出てくるので、メールで謝るのは慣れている・・・自慢にならないか。
「あららぁ、どうもぅひさしぶりぃ。あれ?声がちょっと変だけど風邪でもひいたの?このところ天気おかしいもんねぇ。ちょっと待っててね、いるから。岡君から電話ですよ。」

T女史の会話からして彼なんだろうと思いながら受話器を取る。
岡君というのは以前オフィスでアルバイトをし、今は独立をして仕事も丁寧にやっている男だ。
感じが「カバちゃん」に似ており、「似てるって言われたことない?」と聞いてから口をきいてくれなくなり、それ以来でもある。

「あ~~、もしもしぃ・・あ、ハイ・・・・・あ~~どうも・・お世話になります。はい、はい了解しました。じゃあ役所にすぐに電話して置きますね。え・・でね、先ほどの電話のことなんですが、たぶん別の親しい人と名前を聞き間違えたようなんですよ。失礼しました。ハイ・・では、失礼します・・」

ちがうじゃあねぇか。
○○建築の、この○○のところが聞けばなるほど「岡君」に確かに似てるとは思うが、その後に名前を言ってるでしょうが。そりゃあ早口なんで聞き取りにくいところはあるが、どうして「岡君」と決めつけちゃうんだよぉ。
相手と話をしながら、どのタイミングであやまろうかと考えちゃったじゃあないか。
でも、いきなり「カバちゃ~ん、げんきぃぃぃ」なんて言わなくてよかった。
ドキドキする週末だ。

「扉が開いて小さな女の子が立ってたんですけど」
「せいら」チャンがそう言った。
「オレ、ロックのやかましいの聞きながら仕事してたんで気がつかなかったけど?T君、気がついた?」
「カチャッという扉が開く音は聞いたんですけど気がつきませんでした。」
「だいたいこんなオフィスビルにそんな小さな子が来るわけないじゃない。まあ、誰にでも見えるってわけでもない状況だったのかもね」
「え~~、こわいじゃあないですか。」
「今はね、いまはそんなことよりも締め切りが迫ってる方が怖いの。そんなこと気にしてちゃあ仕事進まないでしょ。」

扉の前付近で探し物をしているときにいきなり扉が開いた。
「ひえぇぇぇ~~」
いつの間にか外に行っていたSが音もなく入ってきた。
「こわいじゃあないか、ばかやろぉぉぉ」
別な意味でドキドキする週末だ。
沖縄から一枚のFAXが届いた。
空間構成を文章に置き換えたもので、一体なんなんだ、これはと思っているときにまたFAXが流れてきた。
音楽が流れる自然の空間の中にあるリゾート地の構想を表わしたものだった。

「今週末までに小川さんも何か表現してみてよ。」
「いいですねぇ。週末までだったら何か出来ると思いますよ。出来たら送りますね」
めちゃくちゃ忙しい日常の中で、こういうことを考えるというのは右脳が動き出す感覚を感じられるのでとても新鮮なことだ。
もっとも、僕が頭の中で考えているのは、白い砂浜に青い海。小さなコテージの階段を下りたすぐ脇にある椰子の木にひっかけたハンモックに飛び乗って、冷えたオリオンビールを飲んでいる自分の姿、だけだったんだけどね。
そこからの展開はまるでない。

ぐずぐずしている間に、今度はアクソメ図やパースなどがどんどん送られてくる。
オープンデスクに来ているT君に手伝ってもらいながら、
「青い海が見える砂浜に椰子の木。ハンモックのあるような風景をネットで探してくれるかな。あ、それと一番大事なことがあった。オリオンビールの写真ね。これだけははずさないようにしっかり見つけておいてね。」
めちゃくちゃ忙しい状態なのに、身体はもう既に解放感漂う南の島に移動している。

「今日で締め切りなんですよ。昨日は夜遅くまで色を着けたりしてましてね。いったんここで切り上げますので」
気分は南の島だったが、手はほとんど動いていなかった。

次回は椰子の実でも書いて送ろうと思っている。


テラス

パソコンを立ち上げてメールのチェックをする際に、ジャンクメールの数がかなり増えていることに最近気がついた。
セキュリティーソフトがある程度は削除用のメールやスパムメールを仕分けてくれるのでひとつづつ削除していく手間は省けるのだが、それにしてもこういうのにはかかわりたくはないものだ。アトランダムに飛ばしてくるんだろうが、邪魔でしかたがない。出来ればこういうのを送ってくるヤツには最大限の文句を言ってやりたい。

「昨日の夜送ったメールが届いてないらしいんですよぉ。」
締め切りの日、夜中にやっと仕上がった図面をファイルにして送った「せいら」チャンが相手先からの電話を受けて、僕にそう言った。
「ひょっとしてメールアドレスが間違ってたかもしれないね。しょうがないからもう一度送ってみて。」
「せっかく締め切りに間に合わせたのにぃ」
文句を言いながら「せいら」チャンはもう一度名刺のアドレスを確かめながら慎重にそれを送った。

「はい、はい、え?届いてたんですかぁ?は・・い・・・え~~~!!」
「どうしたの?トラブルならばオレがあやまるからさ」
大きな手違いがあったのかもしれない、受話器をもって頭を下げる自分を瞬時に想像した。

「ひどいですよぉ~~。朝見たときはあったらしいんですけど、そのままジャンクメールと思って捨てたらしいんですよぉ、もうぉ~」
宛名は本人だが、差出人の欄に「せいら」とあったので無条件にジャンクメールだと思ってすぐに削除してしまった、というのが事の真相だったようだ。

「ははは、申し訳ない!ぐわっははっは」
「笑って謝ってましたよぉ、まったくぅ」